Works 121
大田区南馬込の住宅地に立つ平屋の一戸建て。
元々は、日本画家であったお父様と暮らした様々な思い出が残る、深い緑に囲まれた日本家屋が建っていました。姉弟がご両親の土地を受け継ぎ、お二人の終の住処として、平屋に建て替える計画に初期段階から参加させていただきました。
お父様の日本画のモチーフになったツバキ、実を収穫して味わったカリンやユズなどの果樹をはじめ、思い入れのある樹木が多く残っていました。この土地が持つ記憶をできるだけ引き継ぎながら、将来のメンテナンス性や採光、排水性の向上など、これから暮らしていく上での快適性を考慮して計画を進めました。
剪定して残す木、移植する木、やむを得ず伐採する木を、お施主様とともに1本1本丁寧に見極めていきました。植物だけでなく、お父様が集めて庭の舗装材として埋めていた川石や既存の平板なども、大切な記憶の資材として残しています。
水捌けの悪い土壌だったため、敷地内に保管されていた瓦と新たに加えた玉石を用いて暗渠(地中排水)を設けました。植栽エリアには新たに竹炭を混ぜ込んだ築山をつくることで、水捌けの改善を図るとともに、植物の成長を促す土中微生物の活性化を目指しています。
大切に残しておいた石や平板でアプローチを舗装し、新たに迎えた植物と移植した樹木を調和させながら再配置し、庭を整えていきました。
単に古いものを残すだけでなく、それぞれの植物にとってより良い環境を作った結果、竣工から2年が経った現在、以前にも増して生き生きと枝葉を伸ばす木々の姿が印象的です。
都心部においてこれだけの樹木を維持・管理することは容易ではありませんが、これからもお施主様のお気持ちに寄り添い、メンテナンスをお手伝いしながら、お施主様が新たな思い出を重ねていかれる姿を共に見守っていければ幸いです。
設計:木名瀬佳世建築研究室
写真:安田誠(一部)
- Date:
- 2024
- Area:
- 160m2
- Type:
- 戸建リノベーション