Garden

小さな公園のような庭を思い描いて。

鎌倉という“文化のある街”に根をおろし、庭のある家で暮らせたら。そんな願いを抱いた晃平さんと佳子さん。やがて、古い家をリノベーションしようと決めたときに出会ったのが、旗竿地物件だった。この形状を生かして、玄関に向かうまでの細長い通路を上手に活用して庭をつくった。そして、家の中とひと繋がりに感じられるような眺めのいい庭もある。新しい住まいでの庭のある暮らしについて話を聞いた。

住まいへの考え方が変化したのはコロナ禍に夫婦揃ってリモートワークになったこと。もともとは勤めている会社に近い都心のマンションに暮らしていたが、その土地に暮らす必然は無くなり、鎌倉に住まいを構えることに決め、築45年の古い家をリノベーションした晃平さんと佳子さん。

旗竿地の手前は駐車場に。枠をしつえることで駐車場と庭の境界をゆるやかに作った。

旗竿地を活かした住まいと庭づくりを。

「鎌倉という土地は人気のあるエリアということもあって家が高額になる傾向がありますが、駅から離れていて、さらに旗竿地なので比較的安くこの物件を購入できました。都内のマンションに住んでいたときも庭があったので、一軒家でもちゃんとした庭を作りたいという想いがありました」

妻の佳子さんが続ける。

「通りに面していなくて人目があまり気にならないところは、旗竿地の良点と捉えました。長いアプローチをどうしようか、としばらく思い巡らせ、最終的にこのスペースに庭を作ることに。ここは最後に取り組んだスペースで、まずはデッキを作ることを優先しました」

デッキは家の中と繋がりを感じられる寛ぎのスペースになるようにつくられた。

「このデッキはリノベーションを手がけた建築家の方がつくってくださったもの。建物をぐるりと囲うようにL字型で設計されているので回遊できる楽しさもあるんです。風の抜けもとても心地よくて、感覚としては昔の家の縁側のようでとても気に入っています。そうしたムードなので、家の中では椅子に座るよりも、床でゴロゴロしている時間が長くなり、子どもたちも床でゴロゴロしながら遊んでいます(笑)」

窓の開口が広く、子どもたちがデッキで遊ぶ様子が家の中から見えるのも安心だ。さらに家にいる環境を充実させるべく、デッキまわりに庭を作るためにいろいろとリサーチしているタイミングでBROCANTEに出会ったという。

「インターネットで外構工事をやっている業者の情報がまとまっているサイトがあり、自分たちの好みと合いそうな3つの会社に見積もりを取り、家を見に来てもらいました。いろいろとご提案をいただいた中でBROCANTEさんにお願いしたいと思いました。心惹かれたのは『子どもが出入りする庭』というコンセプトを提案してくださったこと。環境に適した植栽のアドバイスをしてもらうだけではなく、私たちのライフスタイルや生活動線を想像したうえで、もともとあるデッキを活かした提案をしてくださったんです。たとえば、ウッドフェンスをしつらえることだったり、食べられる植物を植えることだったり。日除けのためのタープを提案してもらうなど、自分たちだけでは思いつかなかったアイデアをいただき、“庭のあり方”を広げてもらいました」

芝生や植物のグリーンを眺めるのが楽しくなる庭空間は、家の敷地内に“小さな公園”があるように感じさせてくれる。

「ウッドフェンスをしつらえても閉鎖的な感じにならず、開放感を損なわないちょうどいい高さにしていただいていると思います。この庭にはもともと大きな桑の木があり、それを軸にガーデンデザインしてもらいました。ふとしたとき、この家に庭があるとないでは大違いだな、と感じることも多くて。20種ほどの植物を植えてもらったことで庭の景色に奥行きが生まれたと感じています」と二人が口を揃える。

そして、新たに植えたシンボルツリーは、ブラックティーツリーだ。

「2階の大きな窓の高さまでグングンと伸びていく成長の過程を観察するひとときもまた心地よく幸せな時間です。この木を植えてもらう以前は、窓からの眺めはお隣さんだったので、毎日眺める景色が美しい景色に変わったことが嬉しくて。ブラックティーツリーの成長に合わせて台形的な変形タープを、BROCANTEさんに特注で作ってもらいました」と佳子さん。

庭にはレモン、イチゴの木、ブルーベリー、ビルベリー、ヒメザクロなど食べられる植物、花が咲く植物など、生活のたのしみをもたらしてくれるものを植えた。さらに、日陰でも花が咲くキョウチクトウや常緑のアジサイなど環境に適応する植物も加えた。夫の晃平さんは庭を眺めながら続ける。

「ハーブは料理やハーブティーにして楽しみたいのでもう少し植えたいと思っています。植える土壌にまだ余裕があるので地植えして育てていく作業を楽しみたいです」

そのほかにもオーストラリアンローズマリー、コルジリネなど常緑の植物を植え、庭の充実は進行中だ。

「子どもたちは大人とは別の角度で庭を楽しむこともあります。たとえば、“宝探し”と名づけて、庭の土を掘り返す行為をすることも。古い家ということもあって土の中にいろんなものが埋まっていることがあって(笑)。それを掘り返すことが楽しいらしいんです」

庭は植物を育てるだけではなく、子どもたちの“遊ぶ空間”にもなっている。旗竿地のアプローチを颯爽とかけていく一瞬も、そのことを物語っていた。
 

 
photo / Takeshi Abe, edit& text / Seika Yajima