一つ葉屋根の下。

ムサシアブミ

ひと際目を引く個性的な花(苞)。
日本の山間の地域などで自生する植物ですが、
実はお庭でも育てやすく、高いポテンシャルを秘めています。

サトイモ科テンナンショウ属の多年草です。
関東近辺から沖縄にかけて海岸に近い林の中や、山地の谷沿いで光の差し込む、いわゆる林縁と呼ばれるような場所に自生しています。

kensuke-watanabe

花柄1本、葉柄2本にそれぞれ小葉3で1セットです。
花柄が葉柄よりも短いので、葉っぱの屋根で花が守られているような佇まいとなります。

この濃い紫と白のストライプ模様の花のように見える部分は仏焔苞(ぶつえんほう)と呼ばれる大型の苞(ほう)で、実際の花はこの中にあります。

この、仏焔苞と呼ばれるカバーが「鐙」(馬具)のように丸まった形であること、また、武蔵国の鐙の質が良かったこと、故に特産として知られていたことから「ムサシアブミ(武蔵鐙)」という名がついたと言われています。

宮下多美枝

庭に植えても育てやすく、
宿根草として一度根付けば、後はほったらかしでも毎年生えてきてくれます。

個性的な花(苞)も見どころですが、
お庭の植栽としては、その葉が半日蔭でボリュームを持たせる下草にもってこいです。

例えば大型のホスタを植えたりするような場面で、バリエーションとしてピッタリ来ます。
葉の展開時期もホスタよりも早いので、そういった部分でもお勧めです。

また、株が古くなるにつれて、葉がどんどん大きくなる傾向で、4年目の株は1枚の葉で50㎝近いサイズ感になっています。

葉が大きく艶やかな葉は、南国チックな雰囲気も合います。

群生している様も面白く、年月が経つほど、その年に出てくる花柄が多くなり、葉の屋根の下で暮らす家族のようになります。
大家族を育てていく楽しみも。

秋が深まると葉や仏焔苞が落ち、花序が実になった姿で露わになります。

最初は緑ですが、熟すと赤くなります。

似たような場所に生える同じテンナンショウ属の植物に、

ウラシマソウやマムシグサなどがあります。

kensuke-watanabe

Data

植物名
ムサシアブミ
学名
Arisaema ringens
他の名前・俗称
和名:ムサシアブミ(武蔵鎧)
区分
落葉多年草
参考サイズ
0.3~0.6m

山間部に自生している(神奈川県西部、4月上旬)
単体の全体像 (2組)
半日蔭の下草として◎(神奈川県北西部、4月下旬)
4年目の株、当初より葉のサイズが大きくなっている。(神奈川県北西部、4月下旬)
年々増える花柄。家族が増えていく感じです。(神奈川県北東部、4月中旬)
葉と苞が落ちで露わになった実(神奈川県北東部、10月下旬)
真っ赤に熟した実(神奈川県北東部、11月下旬)
海近くの林縁に自生する、ウラシマソウ(神奈川県南東部、4月上旬)
山間部の林縁に生える、カントウマムシグサ(千葉県中部、4月下旬)

Arisaema ringens

Last Modified at / Published at

植物図鑑について

お庭と生活のお話をさせていただく上で、パートナーともいえる植物たちの事を、私たちなりに感じるそれぞれの良さや、付き合う上で知っておくとよさそうなこと等、観察の記録的な情報も交えながら紹介しています。

題名(植物名)
日本において一般的に用いられている名称です。他にも一般的な名称や俗称、学名の読み音の違いなどある場合は別途記載してます。
キャッチフレーズ
植物の名前は一回聞いて音では認識できてもどういうものか想像しずらいものが多いです。故に覚えずらくもあります。そこで、私たちなりにこの植物を表現する言葉を出来るだけ多くの人がイメージしやすいものと結び付けてあらわそうと試みています。昔の洋楽についていた邦題のような感じで、時には恥ずかしくなるようなダサさも漂いそうですが、何はともあれ興味を持っていただくきっかけとなれば良しと思っています。
学名
植物の中には呼び名が様々あったり、名称が重なったりするものがあるので、誤解を避けるため、どの植物を指しているかの基準とするため記載しています。
区分
東京近辺で見受けられる傾向として、季節によって葉がなくなるか無くならないか大まかな傾向を表記しています。なので学術的な表記とは異なり、あくまでも実用上の目安とするための独自の情報とご理解いただければと思います。
参考サイズ
植栽をしたときに、植物の魅力を感じられる又は剪定を行いながら無理なく管理できるお勧めのサイズ感を表記しています。