春の野に咲く可憐。
タチツボスミレ
’スミレ’という言葉は私たちの生活の中では何かと身近な音となっていますが、改めてこの小さな花と増遇すると、何だか物語の中の人物に出会ったような不思議な感覚を覚えます。
そして、その音から連想される’可憐’や’凛とした’といった形容を、実際の形として鮮明に体感させてくれる気がします。
世界中に多くの種類が存在するスミレの仲間、その中でも日本には最も多くの種類が自生していると言われます。
この種はその中でも早い時期、まだ寒さの残る早春に枯草に混じりながら藤色の花を咲かせます。
北海道から沖縄まで広範囲にわたり自生し、古くは万葉集から松尾芭蕉などの句に登場する’すみれ’や’すみれ草’の多くはこの種の事を指しているといわれています。
それに加え、名前の中の’ツボ’は’庭先’といった意味会いと推測されるということを牧野冨太郎博士が著書で述べられていることもあり、
昔から日本人に親しまれている身近な存在だったことが感じられます。
しかしながら、現代においては関東近辺の都心部及びその近辺ではなかなか見ることが出来なくなっており、寂しい感じがしますが、山間部などの集落に行くと石垣や畑の縁等、相変わらず人の生活のそばに咲いているのを見かけられます。
数多くあるスミレの中でも、地上に茎が立つものと、立たないものに大きく分けることが出来、前者のものは全体的には少数派との事ですが、これに属する本種の名前の中にある´タチ’はこういった区別からつけられた事が推測されます。
細かい種類分けでは、微妙な違いによる区別が多く、タチツボスミレに近しい種ではニオイタチツボスミレ、ナガバタチツボスミレ、オオタチツボスミレ、エゾノタチツボスミレ等あり、さらに同種内の個体差もあったりと、中々見分けの難しいところがあります。
Data
- 植物名
- タチツボスミレ
- 学名
- Viola grypoceras
- 区分
- 落葉多年草
- 参考サイズ
- 10cm