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アイデア次第で生まれ変わる、旗竿地の魅力・活用法

住宅用地の購入を検討する際に、よく目にする用語「旗竿地(はたざおち)」。

旗竿地とは、道路に接する間口の狭い細長い路地(竿になぞらえる部分)と、路地の奥に敷地(旗になぞらえる部分)がある形状の土地のことで、「敷地延長」「路地状敷地」とも呼ばれます。とくに都内近郊では広い敷地が高額で売れないために分割して売りに出されることも多く、接道部分が狭い場合は、敷地のいくつかが旗竿地になってしまうケースも少なくありません。

【旗竿地の図面例】 左側が竿部分の路地、右側が旗部分の敷地

しかしながら、意外にも旗竿地のポテンシャルは高く、お住まいになる方の生活習慣やご要望、竿部分の幅や奥行きによっても変わりますが、アイデアによりとても魅力的なスペースに変わります。

左:Before / 右:After

長いアプローチが植物で楽しくなる、フェンスやゲートを使って印象を変える、収納や駐輪スペースとして有効活用 …等々、活用の仕方はさまざま。今回は沢山の事例の中から、いくつか活用例をご紹介します。

土地の購入を検討している方や、既に旗竿地にお住まいの方など、コンクリートで全面舗装してただの通路にしてしまう前に、是非参考にしていただけたらと思います。

植物の配置や組み合わせで お庭のようなアプローチに

シンボルツリーを取り入れたり、入口や塀に蔓性植物を絡ませたり、路地の長さや幅、造りなど条件によって選ぶ植物や組み合わせも変わってきます。植物が育ち、お庭のような空間になっていく楽しみもありますね。

<事例1.>
幅2.5mほどのアプローチ。ギンヨウアカシアやグレビレア、ギョリュウバイなど常緑性のものを中心に植栽。片側にウッドフェンスを設け、スタージャスミンを這わせています
<事例2.>
左:Before / 右:After
施工から3年が経過し、門に近いプリペットは3mほどに育ち、シマトネリコも幹が太くなり大きく育っています。フェンスにはハゴロモジャスミン、足元にはクリスマスローズやベニシダ、ハマヒサカキなどの耐陰性の強い植物が植えられています。
<事例3.>
柔らかい印象になる浸透性の舗装材のアプローチの両脇には、ジューンベリー(左)やトゲナシピラカンサ(右)、低木のビバーナム・ ハリアナム(右手前)やアジュガ・チョコレートチップ(左手奥)、クリスマスローズやタイム(左手前)などの地被類が成長しお庭のような空間に。
<事例4.>
左:Before / 右:After
既存の鉄平石の乱張り舗装はそのまま活かし、植栽を行いました。比較的小型の高木タイサンボク・リトルジェム(左)とレモンティーツリー(右)を前後に植え奥行き感を与え、砂利舗装をつくることで、将来的にも通路部分があまり狭くならないように工夫しています。

フェンスやゲートなど、造作物で空間を演出

新たにフェンスやゲート、ステップなどを設置することで、植物が少なくても雰囲気の良い空間を作ることができます。機能門柱(表札やポスト、インターホンなどを備えた門柱)などを取り入れて、すっきりとまとめるのも良いですね。

<事例5.>
段差のある隣家からの目線を遮ると同時に、空間の雰囲気をつくるためにフェンスを設置しています。溶融亜鉛メッキ仕上げのスチールと木材を組み合わせ、閉塞感が出ないよう片側は低くしました。既存の花壇にはメインツリーとしてコーストバンクシアが植えられています。
<事例6.>
左:Before / 右:After
幅2.5mほどのアプローチの一部にL字型のウッドフェンスを設けることで、植物が映える空間に。通路は曲線のラインを取り入れることで柔らかさを生み出し、石材とコンクリートを併用し費用対効果を上げる工夫もしています。メインツリーにはシルバーティツリーを植えています。
<事例7.>
<事例2.>で紹介した入口。道路からゲートまでの駐車スペースと家へのアプローチを仕切るため、スチール製のゲートを設置。幅が狭くなる地形を利用し門柱とフェンスを設け、アーチは強度を上げる役割も担っています。施工後3年が経ち、イワガラミ・ムーンライトも伸び花をつけています。
<事例8.>
左:Before / 右:After
道路から建物までの高低差が1m以上ある立地を活かし、すっきりとしたコンクリート仕上げのステップとライティングでリズムのあるアプローチに。交互に配された植栽帯とハードウッドのフェンスが、奥行き感のあるまとまった空間を生み出しています。初春の花が魅力のリキュウバイ(左)と常緑性のレモンティーツリー(奥左)がメインツリーに。

自転車置き場や収納など、スペースを使って機能をプラス

日々の生活を見据えて、駐輪スペースや収納庫を設置するなど実用性を高めたアレンジもおすすめです。毎日通る場所だからこそ、暮らしやすい空間にしたいですね。

<事例9.>
道路から15m程のアプローチに設置されたサイクルポート。門柱機能と合わせて電気自動車の電源も設置されています。施工後2年が経ちレモンティーツリー(手前)やユンカス・ブルーアロー(手前中央)もしっかり根付き、奥のメラレウカ・スノーインサマーも白い花を咲かせています。
<事例10.>
<事例5.>で紹介したアプローチの奥には、タイヤを収納するための物置やベンチも設置。道路からは物置が目隠しになり、限られたスペースでも外で過ごすことができる工夫がされています。
<事例11.>
小型車が駐車できるように車輪の乗る部分にはレンガの舗装を施していますが、主に家族や近隣と過ごす庭となっています。玄関ポーチとの間にハードウッド材で壁をつくることでプライベートを確保。施工後3年が過ぎ、シマトネリコ(左奥)やハマヒサカキ(左下)が旺盛に伸びています。

 

「旗竿地ならでは」の使い方を、より魅力的に

一見、細長い路地が使いづらそうに見える旗竿地も、アイデアや植物の力を借りながら、生活しやすく素敵な空間に変えることができるかもしれません。ご自身やご家族の生活スタイルや大切にしたいことを守りつつ、より良くアレンジできるのが一番良いですよね。

ぜひこれらの事例も参考に、理想の形をイメージしてみていただけたらと思います。

 

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