庭のある一戸建で生活や感性を磨いていく。

鳥の鳴き声が心地よく響く神奈川県川崎市の自然溢れる土地に持ち家を構えた、朝倉さんご家族。広々とした家を建てられる郊外ならではの魅力に惹かれ、この地を選んだ。庭付きの家でゆったりと過ごす、長年の夢を果たした朝倉将行さんと美香さん。庭づくりへの想いや庭で過ごす時間について話を聞いた。

グレイッシュな外壁に対して、玄関のドアやウッドフェンスがアクセントになっているモダンな佇まいの朝倉邸。南側に玄関や庭があり、健やかに育つグリーンが空間に清涼感を与えている。シンボルツリーは常緑樹のオリーブ、ミモザのような花を咲かせるアカシア・ブルーブッシュなど。美しく、品のあるシルバーリーフが枝に密集し、風に揺れる姿が印象的だ。持ち家に対する憧れが強かった将行さんは、満を持して庭のある一戸建てでの暮らしを嬉しそうに話す。

庭のある家に暮らせるようになり、庭を整える楽しみを知る。
「僕はずっと子どもの頃から大きくなるまで、ずっとマンション暮らしでした。そうした環境で育ったので1軒家への憧れはとても強く、いつか庭も欲しい、という想いがありました。そこで家族と犬と暮らせたら……そんな漠然としたイメージがやっと叶ったんです。いざ、どういう庭にしたいかを考えたときに自分たちでデザインを考えることが難しく、その辺りは家の建築を担当していただいた方にお願いしました。イメージしたのは妻が希望した菜園が叶う、庭づくりです」
庭づくりを本格的に始めたのは、この家に暮らしてから。主に美香さんの好みを反映し、少しずつ整えた。
「私の実家は地方にある一軒家だったので、家に庭がある風景はとても自然な景色でした。そういう環境で育ったので、植物とともに暮らす生活をしたくて、マンション暮らしのときから観葉植物を室内で育てていました。庭がある環境に暮らせたら色々と植えたいな、と。新型コロナウイルスで世の中が混乱に見舞われる直前の2020年に家が完成し、ウッドデッキ、フェンス、物置の設置と数本の植木を植える作業は建築業者に担っていただいて。予算的な問題もあって、すべてを一気にお願いするのは難しく、芝生を植えたり、敷石を敷いたりなど、一旦、自分たちできそうなところはトライしてみることに」と美香さん。


手探りで庭づくりを進めた朝倉さん夫婦は、作業しているうちに「自分たちでできることとそうではないこと」がわかったという。
「四角い庭に対して芝生も真四角に植えただけのデザインになってしまい、単調な感じになってしまって。庭を充実させてよりよい風景をつくりたいという想いがあり、知人に紹介してもらったBROCANTEさんに造園の一部をお願いすることにしました」
芝生に敷石を敷き、機能性と眺めの良さをデザインする。

「BROCANTEさんにお願いすることで、玄関と庭を繋ぐ調和のある小道のデザインが叶ったと思います。歩く道筋を踏まえて敷石をランダムに敷いてもらい、歩行による芝の痛みを防止するなど、機能面も考えてもらいました。そういった配慮がなされた緻密なデザインは、やっぱりプロならでは。D I Yでやってみたときよりも見た目的にも洗練された印象があり、こうしたディテールに心を配る大切さを感じています」

庭で過ごす時間の充足感から導かれた“趣味の時間”。
さらに菜園スペースをつくり、植物を加えるリクエストをしたという。
「ウッドデッキの右横のエリアには小さな菜園スペースを作ってもらいました。ニンニク、キッチンハーブや葉物の野菜など料理に使えそうなものを多く植えています。ウッドフェンスのまわりを囲うように、ミモザやジューンベリー、木蓮、アナベルなどを。最初はホームセンターやグリーンショップで自分たちが気になったものだけを植えていましたが、それだけだと生育タイミングや花を咲かせる時季のバランスがうまく整わないことに気づいて。BROCANTEさんに色々と植えてもらったんです。そのおかげで植栽が充実しました。最近は、庭で剪定した植物と買ってきた植物を組み合わせて、リースを作るのが趣味になっています。家で少人数制のワークショップをすることもあるんです」



一方、将行さんはウッドデッキに出て自由な時間を楽しむのが、至福のときだという。

「スピーカーを外に持ち出して、バーベキューをしたり、燻製をしたり。暖かい季節は夜に電飾を灯して、シャンパンを飲むことも。シェードを自分で取り付けて、日差しが強い季節でもゆっくり休めるような工夫もしてみました。以前は、外にある自然を求めてキャンプに出かけていたのですが、庭で過ごす時間が充実してからはとんと出かけなくなってしまいました。ここで過ごす時間が、とてもいい休息時間になっています。僕は会社員ではありますが、基本的に家でリモートワークすることが多いので仕事のオン・オフの切り替えにもこの庭があることがとても助かっていると感じています」と将行さん。
デッキに出て庭の景色を眺めて季節や風の移ろいを感じ、食事や酒を楽しむ。ときにはリースを作ったり、美的センスを磨く創作活動に没頭したりもする。植物のいのちの姿を見つめ、愛で、世話をすることで生命のリズムを知り、生活の楽しみや感性が醸成されていく。その繰り返しの営みにこそ、言葉では言い表せない“豊かさのエッセンス”が存在しているのだろう。

photo / Takeshi Abe, edit& text / Seika Yajima