Garden

隣人に相談することからスタートした、ガーデニングライフ。

神奈川県川崎市にある多摩丘陵の一角にある生田緑地から程近い小高い場所にある住宅地。周辺には、高い建物が存在せず、小さな公園や緑道があり、自然を身近に感じられる環境だ。北欧やカリフォルニアスタイルのような建売住宅が5軒隣接した閑静な住宅地に居を構えるのは、新田志穂さん。お隣に住む白須さんとは、入居タイミングが同時期ということも相まって、住まいを隔てている小道のスペースの半分を分け合うようにして庭をつくったという。その庭づくりに至るまでの経緯、日々のガーデニングの愉しみについて話を伺った。

石畳の細い小道や庭を作るために。

道路に面した石畳みの細い小道には、ウエストリンギア、リキュウバイなどが植えられていて、さまざまな種類の植物が健やかに生い茂っている。その先には、レストランやカフェがあるのでは、と淡い期待をしてしまうほど、眺めていて楽しい、気持ちのいい庭が広がっている。

「元々はコンクリート面だったところを『BROCANTE』さんに壊してもらい、その後に土や石畳を敷いて、小道を作ってもらいました。小道の植物は『BROCANTE』さんに選んでもらったもの。実際に植えて頂きました。『Welcome』と描かれたボードに誘われて、庭の中に入って来てしまう人がたまにいるんですよ(笑)。そして、その奥は安全のためにフェンスが立てられていて、降りられないようになっていて。その先に結構な面積があるのでこの場所を使えないとなると、すごくもったいないと夫と話していたんです。隣の白須さんにも関わることなので、その相談を持ちかけたのが最初の交流でした。お話してみてお互いの意見が一致し、フェンスを取り払う作業をすることに。そうした庭づくりの環境を整えていただく土台となるところも『BROCANTE』さんにお願いしました」と振り返る新田志穂さん。

この工事を経て庭ができ、それぞれの理想のガーデニングライフを追求するように。
「正面から見てうちが左で右が白須さんの庭。小道の先は急斜面になっているのですが、そこに白須さんのご主人と夫がDIYで階段を作りました。奇遇にも二人ともDIY好きだったんです。それぞれ、休みの日は庭の足場を整えたり、ちょっとしたウッドフェンスを作ったりして楽しんでいます」

写真右が新田志穂さん。左が白須江里子さん。旦那さんがDIYした階段にて。

共通の趣味や好みが似ていたことで、“調和する庭”が生まれた。

“ガーデニングとDIY”が趣味という2家族の巡り合わせ。庭づくりについて語り合うまでの親密な仲になることは、ありそうでなかなかない、貴重な縁のようにも思える。

「最初にうちでお茶を飲みながら『フェンスを壊しませんか?』と話す機会を設けた時にお茶を淹れたマグカップがたまたま白須さんの家で使っているものと同じものだったりしたんです。それから、気持ち的に一気に近くなった気がしています。年齢も同じくらいだし、背格好も似ているし、近所の方々には、間違われることも多くて(笑)」

その話に耳を傾けていた白須さんは「お互いに好きな植物のテイストが似ていたのもラッキーだった」と嬉しそうに語る。

フェンスを壊すことでできたスペースにウッドデッキとウッドフェンスを作った新田邸。 この施工も『BROCANTE』によるもの。ウッドボックスの上に植物を並べてディスプレイ。椅子を置き、家の中のインテリアのようにしつらえた。天井のアイアンは、子ども用のブランコをぶら下げることができるように、しっかりと強度があるものを選んだ。ライトを飾ったり、観葉植物を吊り下げたりして、飾って愛でる楽しさを存分に味わっている。
ウッドフェンスの一部にはDIYで黒板を貼って。「子どもたちが絵を描いて遊ぶことも。このウッドデッキがあることで小さなプールを張って、ちょっとした水遊びや夕涼みをする時間が持てるように。私は植物の世話はもちろん、椅子に座り、読書をすることが多いです。そんなに広くはない、3.5畳のスペースはおこもり感があってとても心地よいです」
隣の白須邸の庭。高めのウッドフェンスやアイアンフェンスを誂えることで 安全を確保。ハンギングバスケットに植物を植え替えて、美しくかつ楽しげに。
ビオトープを作り、メダカを育てている。庭の風景が涼しげな印象に。「ときどき、新田さんのお子さんたちも餌やりをしてくれて、可愛がってくれています」と白須さん。

隣人の存在が、ガーデニングを楽しむ張り合いになっている。

「庭に出るタイミングが重なったときは、草花を愛でながらガーデニングや暮らしのことについて話をすることが多いですね。いろんなことを相談し合えるよき “ガーデンフレンズ”だと思っています。白須さんが庭でイチゴを育てていて、あるときたわわに実ってイチゴ畑のようになったとき、お裾分けをいただいたこともありました。ここは立地的に高台なので、時々、突風が吹いて、鉢が倒れてしまうこともたまにあるんです。そういうときは、先に気づいた人が元に戻したりする協力体制があります。旅行に出かけるときは、植物の世話を頼んだりすることも。ひとりだとおざなりになってしまうことが、白須さんの存在によって張り合いが生まれます。自分の知らない植物に出合うこともできますし、どんどんやりたいことが増えていきます。休みの日は、『花屋に行かない?』と誘ってもらうこともしばしば。そんな風に、花や植物のことを愛しく思う、日々のやりとりがとても嬉しいし、庭のアスファルトを隠すやり方や板を貼る計画を話合うこともあります」

新田邸のウッドデッキの奥では、キッチンハーブやキュウリ、トマトなど野菜も育てている。「息子が学校で育てていたインゲンも植えました」。

家族と、そして、隣人と一緒に育む庭。日々のコミュニケーションで庭がどんどん変化し、デザインされていく。そんな自由なスタイルは、これから庭づくりを考えている人にも、きっといい刺激を与えてくれることだろう。
 

 
photo / Takeshi Abe, edit& text / Seika Yajima