アスファルトに咲く可憐

スミレ

幼稚園に通っていたころ’すみれ組’だった私にとっては、なじみ深いこの音。その他にもお店などの商標や人の名前等様々に私たちの生活に溶け込んでいます。
その実物は意外ともいえるほど私たちの生活のそばで、誰が意図するわけでもなく咲いています。
それでも、いわゆる雑草というには余りにも可憐で、出会うと親しみ深い音のイメージと結びつきながら、それに遜色のない実態を垣間見せてくれる特別な存在という気がします。

世界中にに多くの品種が存在し、その中でも日本においては世界一の数が自生するといわれるスミレの仲間。
一般的にはそれらを総じてスミレと呼ぶことが多いですが、狭義にスミレというとこの種’Viola mandshurica’の事になります。
その区別を分かりやすくするために’マンジュリカ’と呼ばれることもあります。

都市部や住宅地の周辺ではあまり見かけられないタチツボスミレ等と逆に、アスファルトやコンクリートの際などの日当たりのよいところに逞しく咲いているのをよく見かけます。

スミレの繁殖には自然の妙ともいうべき流れがあり、その中で蟻が重要な役割を果たします。
可憐な花を咲かせた後に閉鎖花と言われる花弁のない自家受粉を行う花を着け、その花が成熟すると種を周辺へ弾き飛ばします。
そのはじけ飛ぶ距離は1mを優に越すともいわれていまが、その種にはエライオソームという蟻の好む物質が付着しており、それを食料とするために蟻が種もろとも巣まで運んで行きます。その結果さらに遠くへ種が運ばれるわけです。
よくよく考えてみると、随分とタフな感じがするアスファルトの隙間なども、蟻の巣や通り道になっているような場所と重なっている気がして、そんなところに咲いているのも合点が行きます。

このマンジュリカのほかにも都市部のコンクリートなどの場所に見られるスミレの仲間は、ノジスミレ、ヒメスミレ、コスミレ等多くあり、いずれもよく似ているので、繁殖の仕組みと相まって、多くの逞しくも可憐なすみれの花の姿を私たちの生活のそばで披露してくれています。

kensuke-watanabe

Data

植物名
スミレ
学名
Viola mandshurica
他の名前・俗称
マンジュリカ
区分
落葉多年草
参考サイズ
15㎝

砂利とコンクリート混じりの駐車場、アリの巣の上に咲く(神奈川県北東部4月上旬)
コンクリートの縁石上に咲いているため、葉を踏みつけられている。(神奈川県北東部、4月下旬)
縁石際に花を咲かせる(神奈川県北東部、4月下旬)
コンクリートに咲くヒメスミレ'Viola minor Makino'(神奈川県北東部、4月上旬)

Viola mandshurica

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植物図鑑について

お庭と生活のお話をさせていただく上で、パートナーともいえる植物たちの事を、私たちなりに感じるそれぞれの良さや、付き合う上で知っておくとよさそうなこと等、観察の記録的な情報も交えながら紹介しています。

題名(植物名)
日本において一般的に用いられている名称です。他にも一般的な名称や俗称、学名の読み音の違いなどある場合は別途記載してます。
キャッチフレーズ
植物の名前は一回聞いて音では認識できてもどういうものか想像しずらいものが多いです。故に覚えずらくもあります。そこで、私たちなりにこの植物を表現する言葉を出来るだけ多くの人がイメージしやすいものと結び付けてあらわそうと試みています。昔の洋楽についていた邦題のような感じで、時には恥ずかしくなるようなダサさも漂いそうですが、何はともあれ興味を持っていただくきっかけとなれば良しと思っています。
学名
植物の中には呼び名が様々あったり、名称が重なったりするものがあるので、誤解を避けるため、どの植物を指しているかの基準とするため記載しています。
区分
東京近辺で見受けられる傾向として、季節によって葉がなくなるか無くならないか大まかな傾向を表記しています。なので学術的な表記とは異なり、あくまでも実用上の目安とするための独自の情報とご理解いただければと思います。
参考サイズ
植栽をしたときに、植物の魅力を感じられる又は剪定を行いながら無理なく管理できるお勧めのサイズ感を表記しています。