通学路のお花畑

オオイヌノフグリ

人の手で背の高い冬の枯れ草が刈り取られたような空き地、春の兆しが見え隠れし始めるころ都市部の生活のすぐそばにある風景が、この瑠璃色花によって花畑に変わります。

東京郊外で育った僕にとってはお馴染みのいわゆる”雑草”です。
この花にまつわる事でお馴染みの話題と言えば、その名前の意味するところ。
それは犬の陰嚢という意味で、いかにも小学生が喜びそうな感じですが、そのおかげでこの花の存在は幼少の頃から認識しています。

その由来は、これとは別種で元々日本に自生していた植物で果実がそれに似ているイヌノフグリ=学名Veronica caninotesticulata(種名のカニノテスティクラタも犬の陰嚢の意味)という名のものがあり、そのイヌノフグリと似ていて大ぶりなヨーロッパ原産の本種=学名Veronica persica(種名のペルシカはペルシアの意味)が明治時代頃に日本に入ってきた際に自動的にオオイヌノフグリと呼ばれるようになり、若干とばっちりといった感じの経緯でのネーミングだったようです。
オオイヌノフグリの方が現代の日本の環境に適していたのか、強い繁殖力を示してよく広がり、すっかりこちらの方が私たちの身近なものとなったことで、表立ってこのイメージを背負っているというわけです。

因みに属名のヴェロニカというのはキリスト教の女性の聖人にちなんだ名前だそうで、そのギャップを考えるとやはり気の毒な感じがします。

まだ寒さの厳しい時期から、枯草の残る空き地などに少しづつ地を這うような緑を広げ始め、春の兆しを感じられる頃には花畑上に広がる瑠璃色の花を見ることができます。
同属というだけあって園芸品種として出回っているヴェロニカ・オックスフォードブルー等の這性のヴェロニカにもよく似ています。

花期も長く2か月間くらい花を楽しむことができます。
夏になる頃には枯れて無くなるので鬱蒼とすることもなく、少しおおらかな心でみれば雑草といっても厄介な事もなく、春の訪れを演出してくれる愛すべき存在のような気がしています。

きっと現代の日本人の多くの人の心の中の風景にある植物ではないでしょうか。

kensuke-watanabe

Data

植物名
オオイヌノフグリ
学名
Veronica persica Poir.
他の名前・俗称
ルリカラクサ
区分
1年草
参考サイズ
5cm

(3月中旬、神奈川県北東部)
枯草に混じり花を開き始める。(2月下旬、神奈川県北東部)
つくしも顔を出し始めている。花期も長い(3月下旬、神奈川県北東部)
日が陰ると花を閉じる(3月初旬、神奈川県北東部)

Veronica persica Poir.

Last Modified at / Published at

植物図鑑について

お庭と生活のお話をさせていただく上で、パートナーともいえる植物たちの事を、私たちなりに感じるそれぞれの良さや、付き合う上で知っておくとよさそうなこと等、観察の記録的な情報も交えながら紹介しています。

題名(植物名)
日本において一般的に用いられている名称です。他にも一般的な名称や俗称、学名の読み音の違いなどある場合は別途記載してます。
キャッチフレーズ
植物の名前は一回聞いて音では認識できてもどういうものか想像しずらいものが多いです。故に覚えずらくもあります。そこで、私たちなりにこの植物を表現する言葉を出来るだけ多くの人がイメージしやすいものと結び付けてあらわそうと試みています。昔の洋楽についていた邦題のような感じで、時には恥ずかしくなるようなダサさも漂いそうですが、何はともあれ興味を持っていただくきっかけとなれば良しと思っています。
学名
植物の中には呼び名が様々あったり、名称が重なったりするものがあるので、誤解を避けるため、どの植物を指しているかの基準とするため記載しています。
区分
東京近辺で見受けられる傾向として、季節によって葉がなくなるか無くならないか大まかな傾向を表記しています。なので学術的な表記とは異なり、あくまでも実用上の目安とするための独自の情報とご理解いただければと思います。
参考サイズ
植栽をしたときに、植物の魅力を感じられる又は剪定を行いながら無理なく管理できるお勧めのサイズ感を表記しています。