気付けばそこにある春。
ミチタネツケバナ
春の早い時期、冬の間風や日光にさらされ乾燥し少し硬くなった様な土の表面から細い線を立ち上げ、その存在に気が付く頃には先端に小さな白い花が咲いています。
まだ寒さの厳しい時期、中々外に出る気になれず放置気味の鉢植等があると、気が付けば本来育成している植物と共に、時にはその植物に成り代わって、いつの間にかそこ居るこの草。
よくよく見てみるとアスファルトの隙間や、乾燥気味の土場など、春の早い時期、オオイヌノフグリやヒメオドリコソウなど代表的なものが生えないようなところにひっそりと生えています。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、近縁で日本在来種のタネツケバナが水田など湿地で育つのに対して、乾燥に強く都市部などの道端でも見かけられることからこの名になったといわれています。
タネツケバナという名前は日本の稲作事情を反映しており、稲作をする際に種籾の発芽をよくするために水につけて置く作業をする’種漬け’時期にこの花が見られることが名前の由来となったとのこと。このミチタネツケバナはそれよりも早い時期に花を咲かせます。
春にもなり切らない早い時期に花を咲かせ、種をつけ、その後春夏秋とほかの植物が生い茂る期間を種で過ごし、冬の厳しさの抜けきらぬうちに芽吹く。
そんなライフサイクルが都会の鉢植えの土とも会っていたのでしょうか。
そのような事を考えていると、怠けの形として私にとっては後ろめたいようなこの草も、やはり理由があり咲いているのだと思い至り、せめて春になるまではと、すぐに抜かず少し愛でているのも良いなという気がしてきます。
Data
- 植物名
- ミチタネツケバナ
- 学名
- Cardamine hirsuta
- 区分
- 1年草
- 参考サイズ
- 30㎝