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【ガーデンスタッフに聞く】狭い空間活かすアレンジとプランターにおすすめの植物

長年、東京に住んでみて感じたこと。それは植物との暮らしを始めてみたくても、なかなか思うようにスペースが確保できないことでした。

それならば、まずはプランターや鉢から始めてみようと思っても、この植物はプランターで育てて大丈夫なのか、広くないベランダでどのくらいの植物が育てられるのか、どんな組み合わせにすれば見た目にも素敵になるのか…等々、心配が先に立ち一歩が踏み出せないでいました。

そこで、狭いスペースを得意としているガーデンスタッフ・三次に、実際にプランターを使ってSeeding店頭のデッキ部分をアレンジしてみてもらいながら、空間の使い方や植物を選ぶポイント、おすすめの植物を聞いてみました。

ガーデンスタッフ・三次
MAAYA MITSUGI /garden staff

高さやボリュームを程よく取り入れて、より良い空間に

まずは資材を設置していきます。

下の写真(左)がSeedingの店頭デッキ。高さ110cm弱の柵があるだけの状態から始めます。幅は約230cm、奥行は約100cm程度のスペースです。

そこに自作の誘引フェンスを設置します。

「高さがあるものを置くと一気に雰囲気を変えることができます。奥行のないスペースなら、上部に立ち上げて蔓でグリーンのボリュームを、たくさんの鉢を置けない空間なら、高さ2mほどの植物を1本置くだけでも、グッと楽しい空間になります。」

今回のフェンスは既製のワイヤーメッシュを支柱用丸太に留めて、固定もインシュロックで後ろの柵に留めただけのもの。ツルの誘因程度なら強度は十分だそうです。

あわせて、端材で作った木製プランターも設置しました。

誘引フェンス H180×W150cm、プランター H50×W85×D55cm

「複数の植物を1つのプランターで育てるなら、できるだけ土の面積を広く取れて、深さのある大きめのプランターを選んであげると◎。小さなプランターにたくさん植物を植えてしまうと、成長したときにプランターの中がいっぱいになってしまい、根が詰まったり生育が悪くなったり、メンテナンスの頻度も高くなります。」

よく使うのは、幅80~100cm/奥行40~50cm/高さ40~50㎝ 程度のもの。1本で植える際も、高さ150~200cm程の中木ならば、40~50cm径のプランターに植栽します。

 
フェンスもプランターもDIYできれば最高ですが、なかなか難しいとは思いますので、既製のものなども上手く取り入れたいですね。
 

育ち方や特性を活かしながら、ともに暮らす楽しみを

ここから、プランターの周りに植物を配置したり、蔓を這わせたりしながら背景となる部分を作っていきます。

今回用意したのは、シマグミ、珍しくトピアリー仕立てになっているフェイジョア
タイサンボク リトルジェム、実のなる植物としてジューンベリー、斑入りのビワ、そして蔓性のブラックベリー

(左)シマグミ (右)フェイジョア

「シマグミとフェイジョアは高さが出すぎず、横に葉張り良く育ってくれるので、部屋から楽しむグリーンとして、外からの目隠しとしても良いサイズ感でいてくれます。今回はトピアリー仕立てのフェイジョアですが、樹勢はよく似ていて、トロピカルで美味しい実がなりますが、花も甘く楽しみの多い樹種です。どちらも乾燥にも強く、プランター向きです。」

左からタイサンボク リトルジェム、ジューンベリー、斑入りビワ

「個性的な葉で1本でも主役感のあるタイサンボク リトルジェムとビワは根詰まりに強いので、プランターで管理がしやすいです。地植えにすると大木になるジューンベリーですが、プランターならサイズが抑えられ、実も手の届く高さに。小さくてもしっかりと収穫が楽しめます。冬は落葉してしまいますが、その分美しい紅葉が楽しめます。」

ちなみに三次は、果実を食してみるのが大好き。今回はベリー系2種とビワも入れているので、季節を感じながら育った果実を食す楽しみがありますね。

配置は、向かって左側にタイサンボク、その奥に白い花が咲いているジューンベリー、右側手前にフェイジョア、奥にシマグミ。そして木製プランターの右奥にビワ、左奥にはブラックベリーを置いてフェンスに這わせます。

「ブラックベリーは広範囲でなくても実がいっぱい取れるので、誘引するものさえあれば、高い木を入れるよりも背景として楽しい感じになります。プランターを使うのはベランダなどの奥行があまり無い場所なことが多いと思うので、蔓性の植物はおすすめです。」

果樹はプランターで育てると枝葉の成長が抑えられるため実つきが良くなる傾向で、寒さに弱い種類も多く、移動させられる点でもプランター向きなのだそう。ベリー系はわりと日陰にも強く、適応できる環境が多めで取り入れやすいそうです。

狭いところで果樹を育てられるのか心配でしたが、プランター向きのものも結構あるようなので、是非チャレンジしてみたいですね。

冬に咲く花と常緑の植物で、寒い季節も豊かな庭に

さらにプランターの中に、ディアネラ ブルーストリーム、這性のローズマリークリスマスローズミニバラ グリーンアイスを追加。

青みのある葉が美しい ディアネラ ブルーストリーム
左からローズマリー、ミニバラ グリーンアイス、クリスマスローズ

「ブラックベリーは冬に落葉するので、そのまわりに常緑のディアネラとローズマリーを、冬の時期に花をつけてくれるミニバラ グリーンアイスとクリスマスローズを組み合わせて入れました。」

※今回は店頭なのでプランターに植えず ポットのまま置いています

落葉樹の側に置く下草は、「日向でも日陰でも大丈夫な常緑のもの、匍匐性や葉が枝垂れるフォルムや骨格になる程よいボリューム、冬の時期にも楽しみのある植物」を選ぶポイントにしているそう。

(左)花芽があがってきているディアネラ  (右)お花の背景としても◎

「ディアネラ ブルーストリームは葉が美しく、育つと枝垂れてくるグラスとしての楽しみはもちろん、青い花や実が付く姿も嬉しいところです。ちょっと日陰なところで花が咲いていたりするととても魅力的ですし、植えたい花の後ろに入れておくと、その花が終わってしまった後も楽しめます。」

プランターは高さがあるので、匍匐性の植物や葉が枝垂れるグラスの樹勢を活かして、プランターの縁にかかるように植栽すると、見栄えもよく葉の様子もよく見えるのだそう。

「グラス類は皆さんあまり注目されないかもしれませんが、あってくれると冬の間も寂しくないですし、花ものの背景にもなってくれるので、できるだけ常緑のものを選び取り入れています。グラス類も花や穂が魅力的なものもたくさんあるので、是非使ってみてください。」

プランター全体としては、高さの出にくい植物を手前に、程よく高さと横にもボリュームが出る植物をその後ろに、上に伸びていく植物を角に入れると、大きくなった時に良いバランスに。

奥がカレックス、手前がクリーピングタイム、右はメリアンサス

プランター外のジューンベリーとタイサンボクの下にも、それぞれカレックスとクリーピングタイムを置き、単体でメリアンサス マヨールと、ピットスポラム エルフィンも配置しました。

ピットスポラム エルフィン

「ピットスポラム エルフィンは、育つともう少し高さも出てきますし、日向にも日陰に強いので環境を選びません。サイズが小さく、日陰の環境に配置したプランターでも美しい葉色で明るい空間にしてくれます。今回のようなプランターなら骨格として組み合わせて植えても良いと思います。」
 

他にもあります、プランターにおすすめの植物

ここまで、今回使用したプランターにあわせた三次セレクトの植物をご紹介してきましたが、他にもプランターにおすすすめしたい植物があるか聞いてみると、

「日向にも日陰にも強く、骨格としても、高さを出してメインや目隠しとしても使える植物なら、グレビレアもおすすめです。例えば、グレビレア ロスマリ二フォリアという品種は特に耐寒性も強く、7階の日陰に植えても調子が良いくらい。」

左から ローズマリー(這性)、タイサンボク、ディアネラ
その奥に植わっているのが グレビレア ロスマリニフォリア
グレビレア ロスマリニフォリア(植栽から1年半、2月撮影)

「水切れには注意が必要なので、水やりだけしっかりとやれば、葉や花の形も品種によってガラッと変わるので、組み合わせを考えるのも楽しいです。」

植物には様々な葉色や形があります。目を惹く常緑の植物を取り入れておくと、さらに楽しみが増しそうですね。

プランターでも作れる! 一年中楽しめるお庭

教えてもらいながら、花や実のなる植物だけでなく、グラスなどの常緑植物のありがたみを感じましたし、それぞれの植物の長所を活かすことはもちろん、育っていく姿を想像しながら配置などを考えてあげられると、広さに関係なく良いお庭になってくれるのかな、と感じました。
 

狭い空間や地植えができない環境であっても、年間を通して植物との暮らしを楽しめる。素敵なお庭を作ることができる。 今まで思い込みで作っていたハードルが、少し下がった気がします。

そしてやはり思った以上に植物にはパワーがあって、広く豊かな環境でなくても元気に育ってくれたり、逆にプランターのような限られた場所の方が共に長く暮らしてゆくには良い場合もあったり、それぞれの特性をもっと知りながら暮らせたら、より楽しくなりそうだなと思いました。
 

お庭に憧れはあるけれど、今すぐには実現できなかったり、何から始めたら良いかよく分からないこともあるかと思います。

そんな時はまずプランターや鉢植えで、今ある身近な空間を彩ってみるのはいかがでしょうか。少しずつ始めてみると、コツが掴めてきそうです。
 
 

この記事で紹介した植物

シマグミ
フェイジョア
タイサンボク リトルジェム
ジューンベリー
・ビワ(斑入り)
ブラックベリー
ディアネラ ブルーストリーム
ローズマリー(這性)
・カレックス
・クリーピングタイム
メリアンサス マヨール
ピットスポラム エルフィン
クリスマスローズ
ミニバラ グリーンアイス
・グレビレア ロスマリニフォリア