写真で見る植栽実例【Before→After】 植物の気になる経年変化
ご自宅まわりを植物が彩る空間、いわゆる’植栽’。
植物を植える、育てるうえで気になることの1つは「どのくらい大きくなるのか」「どのように成長していくのか」という点ではないでしょうか。
インターネットや図鑑で調べると、おおよその大きさの目安はわかりますが、実際にどのくらいの早さで成長し、どのように姿を変えていくのかまでは分かりにくいものです。とくに外来種の植物の場合、原産地の気候と異なる日本では、図鑑に書かれた情報が必ずしもそのまま当てはまるとは限らず、土壌や気候条件の違いにより生育の様子が変わることも少なくありません。
そこで今回は、実際に施工した植栽の写真(ビフォーアフター)を通して、Seedingでよく取り扱う植物を中心に経年変化の様子をご紹介します。植えられた環境でどのように成長し、どんな姿になっていくのか。植物選びやお庭・植栽づくりの参考にしていただけたらと思います。
エントランスを彩る植栽①
横浜市内、南側エントランスまわりの植栽です。
道路からの目隠しとして、右側にメラレウカ スノーインサマー、元々は鉢植えで育てていたオリーブを左側手前、奥にレモン、写真では見えにくいですが正面ステップ脇にも植物を配置しています。
1年半後
メラレウカ スノーインサマー(右側)は、しっかり根付き幹も太くなりました。オリーブ(左手前)や、華奢だったレモン(左奥)も葉色も良く育っています。正面ステップ脇に植えた落葉種のセアノサスも1.5m程の高さになり、足元の灰青葉のフォッサギラと共にアプローチを彩ってくれています。
エントランスを彩る植栽②
横浜市内、南側エントランスの植栽です。
左側玄関前にメラレウカ ブラックティーツリー、右側奥にアカシア ポートリンカーンワトル、手前にウエストリンギア、中央にユーフォルビア ウルフェニー、左側奥にロータス プリムストーン、手前に匍匐性ローズマリーを植えています。
1年半後
メラレウカ ブラックティーツリーは、最初の1年は1m弱の成長ですが、3年目以降ぐんぐん伸びます。アカシア ポートリンカーンワトルは1年半で2.5倍程度のサイズ感になりました。メラレウカ ブラックティーツリー以外は、施主が年に数回剪定を行い、維持管理しています。
成長差は全体の構成でカバー
「1年半」という経過年数でもそれなりに見映える植栽になっているように思いますが、実際には植込み時の植物の規格や樹種、環境によってもかなり差はありますし、選んで植えたものでも意図した通りに育ってくれないこともあります。
だいたい1~2年くらいである程度良い雰囲気の植栽帯になるよう提案をしていますが、予算等によっても変わってくるため、そういった場合は高木類は小さいものを育てるようにして下草類を充実する 、またはその逆など、全体の空間構成でカバーする工夫をしています。
高木類、低木類、それぞれの中でも大きくなるタイプなのか、そうでないのか、そこに成長スピードなどもあわせて構成を考えています。
目隠しも兼ねる 通路やフェンスの植栽①
東京23区内、東側 幅1メートル程の通路の植栽帯、4年後の様子です。
2階の窓用に植えたメラレウカ スノーインサマー(中央)は2m以上伸び、隣地からの目隠しになっています。
フェンスにはツルハナナスやブラックベリー、クレマチスが旺盛に伸び、足元には耐陰性のあるヤマアジサイ(手前)やアジサイ アナベル(奥)が花をつけています。ピットスポラムは枯れてしまいましたが、その脇に植えていたピスタチア(奥)が地窓前を彩っています。
年1回のメンテナンス工事で大きな木や伸びすぎたツルなどを剪定し、維持しています。
目隠しも兼ねる 通路やフェンスの植栽②
東京23区内、南側 接道部のフェンスと植栽です。
植栽帯は左側にグレビレア ピーチアンドクリーム、中央にレモン、中央左下にウエストリンギア スモーキー、右下に匍匐性ローズマリー、ウッドフェンスにはツル性のスタージャスミンを植えました。
4年半後
レモン(中央)はツルと絡まないよう小さく維持し、逆にツル性のスタージャスミン(ウッドフェンス)は目隠しにもなるため剪定は控えています。グレビレア ピーチアンドクリーム(左側)は生育が旺盛で1年で1m以上大きくなるため、剪定は全体の半分程になるようバッサリと行っています。
植物の目隠しで構造物のボリューム感も緩和
ウッドフェンスの事例は、室内から見ると近隣の建物の窓が気になる高さでしたが、フェンスを高くすると見た目の印象や内側からの圧迫感も出るため、目隠しとしてスタージャスミンを取り入れました。
狙った通りにスタージャスミンが伸びてくれて、目隠しとしてはもちろん、道路側から見た時の構造物のボリューム感を和らげる役割も果たしてくれています。
高木から低木まで、住宅まわりで活躍する植栽
横浜市内の住宅、外構植栽工事を全体的に行い、5年程経過した様子です。
北側 サイクルポート(駐輪場)に設置したスチールパーゴラはスタージャスミンで覆われ、中庭に植えた当時3m弱だったシマトネリコも5m以上に成長しています。
どちらも生育が旺盛な樹種のため、本来はしっかりした剪定が必要ですが、地盤が堅いため成長が抑制されていることもあり、通常よりは生育は控えめで維持できています。
続いて南側 エントランス。
左側のオリーブや足元のラベンダー、門柱前のシロバナギョリュウバイ、足元のディエテスなど、どれも常緑種で生育が良いため、1年に数回、施主が剪定を行っています。
道路に面し、目立っていたヒートポンプシステムまわりも植物で和らげるため、15cm程の隙間に低木の苗を植えました。
約5年後
ラベンダー(左側)、ウエストリンギア スモーキー(中央)、ローリエ アングスティフォリア(右側上)、匍匐性ローズマリー(右側下)。どれも1年に数回、施主がカットして維持しています。
お庭、駐車スペースの植栽
埼玉県北部の住宅、こちらも外構植栽工事を全体的に行った5年後の様子です。
東向き 奥行き4m程の中庭。高さ2.5m程の株立のジューンベリー(中央)は高さ幅ともに4mを超える大きさに育ち、白花のアジサイ アナベルとワインレッドのセイヨウアジサイ、シャクヤク(右側)は株も2~3倍に成長しています。低木類の強い剪定は行っていません。
西向き 来客用駐車スペースまわり。左から順に、灰緑葉のシマグミ、1階の高窓へかかるようにシマトネリコ、施主がお持ちだったオリーブ、スモークツリー、黄緑色の葉のアカシア テレサを植えています。
5年後
それぞれ旺盛に伸び、年に数回、施主がメンテナンスを行っています。
石材の目地に植えたいくつかのヒメイワダレソウが繁殖し、下草が枯れてしまった植栽帯全体を覆っています。なお、ヒメイワダレソウは匍匐性の茎が伸び広がり、踏圧がないと立ち上がってしまうので、広がりを抑える場合はバッサリとカットが必要になります。
淘汰されるものあれば、補うものあり
下草として植えた植物が枯れてしまったり、年数が経つ中で一部の植物が淘汰されてしまうことはよくあります。空いてしまったスペースに新たな植物を植えることもありますが、頻度としてはそれほど高くありません。
植栽にはたいてい多めに植物を植えているので、枯れたものがあっても2~3年すると他の植物が大きくなってカバーされることも多いです。そのため、植物がお好きで新たに違う植物を植えたくなる方は、カバーしてくる性質の植物を小さくして植えると良いでしょう。
植えてみて、経過や成長を見る楽しみ
今回はどの地域のどんな環境で、数年後にこうなりました、という事例をご紹介しましたが、実際に植えてから育っていく様子は、それぞれの植物が持つ特性や植えられた環境、条件によっても本当にさまざまで、一概に「こんな風に育ちます」と言い切れないところがもちろんあります。
そんな中でも、ご自宅の環境と照らしあわせながら、どんな植物を植えようか、どこに植栽をつくってみようかと考えるきっかけや参考になれば嬉しいです。
良くも悪くも予想した通りに育たないこともありますが、それも含めて成長過程やその時々の植栽の見え方を楽しんでいただけたらと思います。
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